話
尸變
『聊齋志異』巻一に収められた一話。維基文庫の翻刻本文では、死んだばかりの女性の遺体を安置した部屋に泊まった旅の客が、夜中に起き上がって動き回る遺体に遭い、追われて逃げる顛末が語られる。
資料の記述
尸變は聊齋志異に現れる。『聊齋志異』第一巻の目次で「考城隍」「耳中人」に次ぐ3番目の話として収められている。
この記述の範囲: 維基文庫の翻刻・目次の範囲
- 聊齋志異(維基文庫の総目次頁) 総目次頁のリンク一覧(聊齋志異/第01卷へのリンクに付された話名アンカー)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「聊齋志異/第01卷」頁内、「耳中人」の次・「噴水」の前の見出し「尸變」
キョンシー(僵屍・殭屍)は尸變に現れる。本文でこの遺体は一貫して「尸」「女尸」「僵女」と呼ばれ、「屍」の字は一度も使われない。「僵」の字も3箇所に現れるが、いずれも「僵臥(硬直して横たわる)」「抱樹而僵(木を抱いたまま硬直する)」「僵女(硬直した女)」のように状態を表す語としてで、「僵屍」という複合語そのものは本文に一度も現れない。
この記述の範囲: この維基文庫翻刻の用字の範囲
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」全文(陽信某翁者〜宰與之牒,齎送以歸)
尸變は屍變(死体が変化して動き出すとされる現象)と異なる。研究上の呼称「屍變」(「屍變(死体が変化して動き出すとされる現象)」)とこの話の題「尸變」は同音・同構成だが、この維基文庫翻刻の用字は「尸」であり「屍」ではない。
この記述の範囲: この維基文庫翻刻の表記の範囲
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」の見出し
陽信の宿屋の主人親子が路傍で旅商人を泊める店を営んでおり、ある日暮れ方に来た四人の車夫を、他の客室が満室だったため、ちょうど死んだばかりの息子の嫁の遺体を安置している部屋に泊めた、と記される。
この記述の範囲: 「尸變」冒頭段落
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」冒頭段落
四人のうち三人はまもなく寝入ったが一人はまだ寝付かず、霊床(棺を安置した台)から物音がしたのに気づいて目を開けると、覆いを持ち上げて遺体が起き上がるのが見えた、と記される。
この記述の範囲: 「尸變」前半(察察有聲の段)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」前半、察察有聲の段
起き上がった遺体は顔がうすい金色で額に生絹を巻いており、寝室に入って眠っている三人の客それぞれに息を吹きかけた、と記される。
この記述の範囲: 「尸變」前半(面淡金色・遍吹臥客者三の段)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」前半、面淡金色・遍吹臥客者三の段
まだ目覚めていた客は布団で頭を覆い息を殺していたが、遺体は他の客と同様に彼にも息を吹きかけてから部屋を出て行き、紙の覆いの音がして元通り横たわった、と記される。
この記述の範囲: 「尸變」中盤(陰以足踏諸客の前まで)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」中盤、客大懼〜見僵臥猶初矣の段
客が身を起こして服を着ようとすると再び物音がして遺体が戻り、重ねて何度か息を吹きかけてからようやく離れ、霊床が鳴る音でまた横たわったと分かった、と記される(起き上がろうとする客を、遺体が二度阻む形になる)。
この記述の範囲: 「尸變」中盤(裁起振衣〜復臥の段)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」中盤、裁起振衣〜少間聞靈床作響の段
客は布団の中でズボンだけ身につけて裸足で部屋の外へ走り出た。遺体も同時に起き上がっていたが、客が閂を外して外に出たあとになって初めて、走って追いかけてきた、と記される。原文は追う動作を「馳(走って追う)」と表し、跳ねるという意味の語は使われていない。
この記述の範囲: 「尸變」中盤(従被底漸漸出手〜尸馳從之の段)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」中盤、乃從被底漸漸出手〜尸馳從之の段
客は叫びながら走ったが村人は誰も気づかず、助けを求める間もなく町の方角へひたすら走り、東の郊外の寺で木魚の音を頼りに山門を叩いたが、道人(原文の語)はすぐには開けなかった、と記される。
この記述の範囲: 「尸變」中盤(客且奔且號〜道人訝其非常の段)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」中盤、客且奔且號〜道人訝其非常の段
道人(原文の語)が開ける間もなく遺体が客の背後一尺ほどに迫り、客は門外の白楊の木を挟んで逃げ回った(遺体が右に回れば客は左へ、というように)末に双方疲れ、遺体が不意に立ち止まった、と記される。
この記述の範囲: 「尸變」後半(尸已至〜尸頓立の段)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」後半、旋踵尸已至〜尸頓立の段
立ち止まっていた遺体は不意に激しく動き出し、両腕を木越しに伸ばして客をつかもうとしたが、客は驚いて地に倒れ、遺体は捕らえそこねて木を抱いたまま硬直した、と記される。
この記述の範囲: 「尸變」後半(尸暴起〜抱樹而僵の段)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」後半、尸暴起〜抱樹而僵の段
中で様子をうかがっていた道人(原文の語)は物音が止んでからようやく出て来て、地に倒れている客を見つけ、背負って中に入れたが、客が息を吹き返したのは夜通しかかってからだった(終夜始蘇)、と記される。
この記述の範囲: 「尸變」末尾(道人竊聽良久の段)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」末尾、道人竊聽良久〜負入終夜始蘇の段
夜が明けて道人(原文の語)が木を見ると遺体が抱きついたまま硬直しており、県令が自ら出向いて検分したところ、両手の指が木に深く食い込んで曲がったまま抜けず、数人がかりでようやく引き離した、と記される。
この記述の範囲: 「尸變」末尾(時晨鐘已盡〜視指穴如鑿孔然の段)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」末尾、時晨鐘已盡〜視指穴如鑿孔然の段
客は県令に、四人で出てきたのに自分一人しか戻れない事情を村でどう証せばよいかと訴え、県令が証明の文書を与えて客を帰したところで話が終わる、と記される。
この記述の範囲: 「尸變」末尾(遣役探翁家〜宰與之牒の段)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」末尾、遣役探翁家〜宰與之牒の段
両腕を前に伸ばすは尸變に現れる。遺体が木越しに両腕を伸ばして客をつかもうとする場面(伸兩臂隔樹探扑之)に、この動作が現れる。
この記述の範囲: 「尸變」後半の一箇所のみ
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」後半、尸暴起,伸兩臂隔樹探扑之の一文
遺体が去ったあと、まだ目覚めている客はひどく恐れて声を立てず、足でそっと仲間の客を踏んでみたが、仲間は少しも動かなかった、と記される(息を吹きかけられた三人がどうなったかを、本文はこの時点では言葉にしない)。
この記述の範囲: 『聊齋志異』卷一「尸變」(維基文庫の翻刻)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」前半、客懼甚〜諸客絕無少動の段
県令が役人を宿の主人の家に遣わすと、家では遺体が消え客が死んでいると騒いでおり、役人が事情を告げると、主人は役人について行って遺体を担いで持ち帰った、と記される。
この記述の範囲: 『聊齋志異』卷一「尸變」(維基文庫の翻刻)
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 「尸變」後半、遣役探翁家〜舁尸歸の段
キョンシー(僵屍・殭屍)は尸變に関わる。本文は、屍が再び動き出す契機を、客が身を起こして衣を整えようとした際の物音と結びつけて描く。客が布団の中で息を止めていたことが屍に気づかれずに済んだ理由だとは述べておらず、息を止めていた間も屍は他の客と同様に彼にも息を吹きかけている。
この記述の範囲: 『聊齋志異』尸變(維基文庫翻刻)で読んだ範囲
- 聊齋志異/第01卷(「尸變」を含む巻一の全文) 聊齋志異/第01卷「尸變」中盤(客大懼のくだり以降)