文献
子不語
- 新齊諧
清の袁枚が書いた、怪異の話を集めた文言の短編集で、全二十四卷。維基文庫の頁の解説は、書名を『論語』の「子は怪・力・乱・神を語らず」からとったとし、自序は、初め『子不語』と名づけたが、元代の人の書に似た書名があると知って『新齊諧』と改めたと書く。馮藝超(2007年)は、僵屍にかかわる話を二十一篇と数える。
資料の記述
僵屍求食は子不語に現れる。維基文庫の版では、この話は『子不語』巻13の目次14番目の話として収められている。
この記述の範囲: 維基文庫版『子不語』巻13
- 子不語 卷13 子不語 巻13、目次14番目「○僵屍求食」の見出し
日本語全訳がある(平凡社・東洋文庫、手代木公助訳、2009年8月刊行開始、全5巻)。出版社は「本邦初全訳」とする。
この記述の範囲: 平凡社公式書誌ページの記載範囲
- 子不語1(全5巻)(東洋文庫788) 平凡社「子不語1(全5巻)」書誌ページ
僵屍(にんべんの表記)は子不語に現れる。馮藝超論文は、点校本『子不語』(湖南岳麓書社1985年版、乾隆53年随園刻本を底本とし、点校者が「有意作偽、過於穢褻」とみなした『控鶴監秘記』1篇を補入。全24巻745篇)のうち、僵屍に関わる話を21篇と数える。
この記述の範囲: 馮藝超2007論文の数え方(同論文の底本・版に限る)
- 《子不語》正、續二書中僵屍故事初探 印刷頁191(脚注6、版本と篇数の説明)
キョンシー(僵屍・殭屍)は子不語に見られる。馮藝超論文は、発生場所が明記される話に限ると、江蘇・浙江が各8話で最多だと述べる。
この記述の範囲: 馮藝超2007論文の統計(『子不語』『續子不語』正続二書合算、発生場所が明記された話のみ)
- 《子不語》正、續二書中僵屍故事初探 印刷頁191(緒論、地域分布の段落)
屍變(死体が変化して動き出すとされる現象)は子不語と異なる。馮藝超論文は、その猫犬の禁忌が『子不語』やその他の小説の記述にはほとんど反映されていないと指摘し、理由は屍変の観念がすでに広く受け入れられていたためではないかと推測するにとどめている。
この記述の範囲: 馮藝超2007論文、緒論部分(著者自身の推測であり断定ではない)
- 《子不語》正、續二書中僵屍故事初探 印刷頁193の脚注15
秦中墓道は子不語に収められている。
この記述の範囲: 維基文庫の翻刻(巻2)の範囲
- 子不語/卷2(「秦中墓道」を含む巻2の全文) 子不語 巻2「秦中墓道」(見出し)
閱微草堂筆記巻10は、袁枚の『新齊諧』(『子不語』のこと)に載る、南昌の書生の話を引く。死んだ書生の動く屍が夜に友を訪ね、はじめは頼みごとをし、次に感謝し、次に名残を惜しみ、最後は姿を変えて友に襲いかかった、という筋としてまとめる。
この記述の範囲: 巻10のこの一節の範囲
- 閱微草堂筆記/卷10 閱微草堂筆記 巻10(同段落後半)
南昌士人(子不語卷1)は子不語に現れる。南昌の北蘭寺で共に学んでいた二人のうち、年長の者が帰省中に急死した。その夜、死んだ者が寺の年少の友の寝床に来て、自分は鬼だと告げ、害するつもりはなく死後のことを託しに来たと言い、七十余の母と三十前の妻の世話、未刊の文稿の刊行、筆屋への借金の返済、の三つを頼んだ。
この記述の範囲: 『子不語』卷1「南昌士人」前半
- 子不語 卷1 子不語 卷1「○南昌士人」第1段
鬼吹頭彎は子不語に現れる。『子不語』卷二十三に収められた一話。江西の武挙(武官の試験の合格者)で千總(武官の位)の林は、兵の給料を都へ届ける途中、山東の古い廟に泊まり、僧から楼に怪が出ると聞いても勇を頼んで灯をともして待った。女の僵屍が口から吹きかける臭い息を避けようと顔をそむけたまま格闘を続けた林は、それからのち首がひょうたんのように曲がり、二度とまっすぐにならなかった、と話は結ばれる。
この記述の範囲: 『子不語』卷二十三「鬼吹頭彎」全文
- 子不語 卷23 子不語 卷23「鬼吹頭彎」の冒頭と末尾
棺屍求祭は子不語に現れる。『子不語』卷十七に収められた一話。話の主は常州の御史(官吏を監察する官)の吳龍見の弟で、李氏の家に住み込んで教えていたとき、広い広間の傍らに埃をかぶった古い棺があるのを見慣れていたとする。話の終わりに、棺の主は李氏の高祖(祖父の祖父)で明の侍郎(中央の役所の次官)の李傑であり、子孫が多くて風水(墓地の吉凶の占い)に惑い、葬らずに置いていたのだと記す。
この記述の範囲: 『子不語』卷十七「棺屍求祭」の冒頭と末尾
- 子不語 卷17 子不語 卷17「棺屍求祭」の冒頭と末尾
皂莢下二鬼は子不語に現れる。『子不語』卷十四に収められた一話。丹陽の南門の外に住む呂氏は、大きな利益をあげる皂莢の果樹園をもち、実のなる時期には父子で盗人の番をしていた。紅い衣の女の屍が掘り出されてからは、父子は二度と園の番をしなかった。三日後に木の下で倒れていたのは、番のいない園に盗みに入った西隣の男で、木の下で首の無い人に手招きされて気を失ったのだと話した、と記す。
この記述の範囲: 『子不語』卷十四「皂莢下二鬼」全文
- 子不語 卷14 子不語 卷14「皂莢下二鬼」の冒頭・第1段の末・第2段
李通判(子不語卷一)は子不語に現れる。『子不語』卷一に収められた一話。老僕は身代わりを申し出たあと、日ごろ拝む聖帝廟で裸足の僧に、顔じゅうに妖しい気が出ていると叱られ、いざという時に開けよと紙の包みを渡される。三日目、棺から助け出された主人の姿の者が道士の声で話すのを聞いて包みを開くと、中の五つの爪が長い金の竜になって老僕を部屋の梁に縛り上げ、鬼と主人の姿の者は老僕の寝床に入り込めなかった、と記す。
この記述の範囲: 『子不語』卷一「李通判」第3段から第5段
- 子不語 卷1 子不語 卷1、見出し「○李通判」、「老僕奉道士於家」で始まる段から「法敗矣」まで
掘塚奇報は子不語に現れる。『子不語』卷九に収められた一話。杭州の朱某は六、七人の仲間と夜ごと鋤を持って墓を掘ったが、枯れた骨ばかりで金銀が少ないので、乩盤(神を降ろして字を書かせる占いの盤)で埋蔵を占った。降りた神に戒められて一度はやめたが、一年余りのち、西湖の水仙と名のる神が保俶塔の下の井戸の西に富人の墓があると告げ、掘り当てた石の槨(棺を納める外箱)を浄寺の僧が呪文で開けると、中から長さ一丈ほどの青い腕が伸びて僧を引き込み、裂いて食べた。朱は訴えられて家を失い、獄中で首をくくった、と記す。
この記述の範囲: 『子不語』卷九「掘塚奇報」第1段・第2段
- 子不語 卷9 子不語 卷9「掘塚奇報」第1段・第2段
黑煞神(子不語卷八)は子不語に収められている。
この記述の範囲: 『子不語』卷八(維基文庫の翻刻)
- 子不語 卷8 子不語 卷8、見出し「○黑煞神」
雷誅王三(子不語卷十七)は子不語に収められている。
この記述の範囲: 『子不語』卷十七(維基文庫の翻刻)
- 子不語 卷17 子不語 卷17、見出し「○雷誅王三」
苕帚(走屍を打ち倒す道具)は子不語に現れる。『子不語』卷十七「白骨精」では、処州の山里で地主を追ってきた白いもの(髑髏)は、半分の高さの柵を越えられずに柵に噛みつき、鶏が鳴くと倒れて白骨の山になった。土地の人は、月の明るい夜にはよく出て祟るが、苕帚(ほうき)でだけ打ち倒せる、と言った。同じ書の卷十五「吳髯」では、家人が、恨みを持って取りついた死者の霊(冤鬼)の見える所を毎日苕帚で打ったが効かなかった、と書く。
この記述の範囲: 『子不語』卷十七「白骨精」と卷十五「吳髯」の一文ずつ。どちらも屍ではなく、髑髏の怪と冤鬼の話
鏡は子不語に現れる。『子不語』には、道士や法師が鏡で死者の霊や妖の正体を映し出す話がいくつかある。卷十三「張憶娘」では、道士が大きな鏡に清めた水を注ぐと、自ら首をくくった名妓の張憶娘の姿が映り、道士は、妖や狐なら払えるが男女の恨みは払えないと言って去る。卷十四「狐鬼入腹」では、天師(道教の教団の長)に従う法官(術を行う道士)が鏡で病人の腹を照らし、中にいるのは妖ではなく前世の恨みを持つ鬼だと見分けて、符や籙(道教の法の文書)では治せないと言う。
この記述の範囲: 『子不語』卷十三「張憶娘」と卷十四「狐鬼入腹」の各一段(維基文庫の翻刻)。どちらも屍の話ではない
鏡は子不語に現れる。『子不語』卷三「鄱陽湖黑魚精」では、鄱陽湖の黒い魚の怪を退治するために、天師が小さな銅鏡を渡して、これで人を照らし、一人で三つの影を持つ者を見つけたら知らせよと命じる。鏡で江西じゅうを照らして回ったすえ、村の楊家の子に三つの影が見つかり、天師はその子を湖に投げ入れて怪を討たせた、と記す。
この記述の範囲: 『子不語』卷三「鄱陽湖黑魚精」第2段・第3段(維基文庫の翻刻)。屍の話ではない
- 子不語 卷3 子不語 卷3「○鄱陽湖黑魚精」第2段と第3段
鶏の初鳴き(雞初鳴)は子不語に現れる。『子不語』卷十三「僵屍貪財受累」では、棺の中の金銀をねらって棺を開けた塾の先生の王を追って楼に上がった屍が、楼の下へ突き落とされたあと、まもなく鶏が鳴いてからは物音を立てなくなる。卷十五「棺蓋飛」では、空を飛ぶ棺の蓋に追われた李甲が叫び続けるうち、鶏が一声鳴くと蓋が消え、李はのちに「人の声は鶏の声に及ばない。鬼は人を怖がらず、かえって鶏を怖がるのか」と人に語った。
この記述の範囲: 『子不語』卷十三「僵屍貪財受累」・卷十五「棺蓋飛」の本文。「棺蓋飛」で人を追うのは屍ではなく、棺の蓋
畫工畫僵屍(子不語卷五)は子不語に現れる。『子不語』卷五に収められた一話。肖像を描くのが得意な杭州の劉以賢は、父を亡くした隣家の息子が棺を買いに出るときに頼んで呼ばれ、死者の姿を描くことになった。家に人がいないので楼に上がり、死者の床のそばに座って筆を取ると、屍が起き上がった。逃げれば追ってくると考えた劉はそのまま描き続け、劉が腕や指を動かすたびに、屍も同じように動いた。戻った息子と隣人は、起き上がった屍を見て一人は倒れ、一人は楼から転げ落ち、最後は倒れた者に生姜湯を飲ませて目を覚まさせ、屍を棺に納めた、と記す。
この記述の範囲: 『子不語』卷五「畫工畫僵屍」の本文
- 子不語 卷5 卷五「畫工畫僵屍」の全文
何翁傾家は子不語に現れる。『子不語』卷九「何翁傾家」では、亡くなった長男の嫁の霊と、その霊を遠くへ送るはずだったあの世の護送役の霊が、次男の嫁と三男の嫁に入れ替わり取りつき、何翁は二年にわたって術者を探し回る。そこへ江西の道士が招かれて来て、十数枚の札を家の前後の門に貼り、部屋で剣を持って星を踏む歩みをする。屋根の隅で雷のような音がすると嫁たちは伏し、道士は小さな瓶を掲げて霊が入ったと言って口を封じた。道士が長男の嫁の墓を開かせて棺を斧で割ると、顔は生きているようで、こわばった屍から血が出た。屍を焼いた灰を瓶とともに埋めて石で押さえると、祟りは絶えたが、何翁はこれで家を傾けた。
この記述の範囲: 『子不語』卷九「何翁傾家」の最後の段
- 子不語 卷9 卷九「何翁傾家」第四段(江西の道士が来る段)
王將軍妾は子不語に現れる。『子不語』卷七「王將軍妾」で、明の将軍の亡き妾の霊につきまとわれた慕崇士は、開封の宿で「王將軍亡妾張氏」と書かれた朱塗りの棺を見つけ、その夜また現れた霊が道連れにすると言うので、夜のうちに城に入り、同僚の役人に告げて道士に払わせようとした。しかし役人たちに引き止められて朝まで飲み、翌朝宿に行くと書童が首をつって死んでいた。役人が怒って棺を割かせると、屍は装いも鮮やかで、こわばって腐っておらず、焼くと怪は絶えた。
この記述の範囲: 『子不語』卷七「王將軍妾」第二段
- 子不語 卷七 卷七「王將軍妾」第二段
馮藝超(2007)は、民間では道士に邪を払い鬼を追う力があると広く信じられ、僵屍を治めるのも当然とされるが、『子不語』正続の僵屍の話には道士の姿がほとんど見えず、僧もまた同じで、少なからぬ話では、僵屍が抑えられたあとになって弔いのために僧が出てくる、とする。僵屍が現れる場所には廟が少なくないのに、袁枚の筆は宗教の力をあまり書かず、韋馱(寺を守る神)の像が僵屍に壊される話さえある、とも書く。
この記述の範囲: 馮藝超「《子不語》正、續二書中僵屍故事初探」の「僵屍の畏忌と伏制の法」の項の書き出し
- 《子不語》正、續二書中僵屍故事初探 印刷頁 208(「(二)僵屍の畏忌及び伏制の法」の書き出し)